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執筆者の写真 Faber Corporation /株式会社 ファベル

♭系のダイアトニックスケールを吹いてみましょう!
ヘ長調 F、変ロ長調 B♭、変ホ長調 E♭

更新日:10月21日

尺八で「ドレミファソラシド」を吹くためのヒント No.3_1 目次へ>



ダイアトニックスケールとは、1オクターブを7つの音に分けた7音音階のことです。5つの全音と2つの半音で構成されています。主音から『全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音』の順で音を並べたダイアトニックスケールはメジャースケール:長音階と言って、いわゆる「ドレミファソラシ(ド)」のことです。

以下の図の上部に出てくるドレミファソラシド は「移動ド」による表記です。「移動ド」とは音の高さ(音程)ではなく調(キイ)に合わせて「ドレミファソラシド」の位置を書いたものです(階名)。たとえば調がヘ長調(キイ=F)であれば、ハ長調の「ファ F」を「ド」としてそこからドレミ・・・を数えます。一方、五線譜の上に書かれたCDEFGABC の方は調(キイ)に関わりなくハ長調を基準に「音の高さ(音程)」を表したものです。

同じ指使いであっても琴古(きんこ)流と都山(とざん)流では違う呼び方する場合がありますが、その場合も音程は同じです。



1. ヘ長調 F major


1オクターブ目


図1:ヘ長調 F major 長音階運指表_1オクターブ目


主音となる「ド」 F (ハ長調の「ド=C」から数えて4度上=5度下 )に設定して7つの音を『全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音』の順で音を並べた音階です。具体的には、ド(F) レ(G) ミ(A) ファ(B♭) ソ(C) ラ(D) シ(E) ド(F) という並びになります。ファに調号の♭がつきます(B♭)。


 (F) → «ツ»: 基本5音の二番目の音です。


 (G) → «レ»: 基本5音の三番目の音です。


 (A) → «チ»: 基本5音の三番目の音です。


ファ (B♭) → «リのメリ» (琴古) / «ハの半音» (都山): 基本5音の «リ/ハ» (C5) を一音(半音二個分)下げた音程(C♭♭=B♭)、つまり «リ/ハ» の一音メリ音です4孔を4分の3閉じてメリます。


 (C) → «リ» (琴古) / «ハ» (都山): 基本5音の五番目の音です。


 (D) → «ロ»: 筒音の «ロ» の1オクターブ上の音です。


 (E) → «ツの中メリ» (琴古) / «ツのメリ» (都山):  «ツ» 半音下げた音程 (F♭=E) 、つまり «ツ» の半音メリ音です1孔を半分閉じて少しメリます。



2オクターブ目


図2:ヘ長調 F major 長音階運指表_2オクターブ目



 (F): «ツ» から  (C): «ヒ/ハ»まで → 最初のオクターブと同じ指使いです。息の流れを速めると1オクターブ上の音が出ます。なお琴古流では «リのメリ» の一オクターブ上の音は «ヒのメリ» と言います。


 (D) → «五のハ» (琴古) / «ピ» (都山). 筒音の «ロ» の2オクターブ上の音です。5孔に少し隙間をあけて少しメルと音が安定します。

 (E) → «四のハ» (琴古) / «四» (都山). 


ド:3オクターブ目のド «大甲のツ»  標準的な尺八ではこの音を出すことができません «ツ» の指使いで大甲を鳴らすと1.8管の場合 ではなく半音高い F♯ の音程になります。


2. 変ロ長調 B♭ major


1オクターブ目


図3:変ロ長調 B♭ major 長音階運指表_1オクターブ目


へ長調の主音(ド=F)から数えて5度下(4度上)のファを主音(ド=B♭)として7つの音を『全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音』の順で音を並べた音階です。具体的には、ド(B♭) レ(C) ミ(D) ファ(E♭) ソ(F) ラ(G) シ(A) ド(B♭) という並びになります。ドとファに調号の♭がつきます (B♭とE♭)。


 (B♭) → «リのメリ» (琴古) / «ハの半音» (都山):  «リ/ハ» 一音(全音)下げた音程 (C♭♭=B♭)、つまり «リ/ハ» の一音メリ音です4孔を4分の3閉じてメリます。


 (C) → «リ» (琴古) / «ハ» (都山): 基本5音の五番目の音です。


ミ (D) → «ロ»: 筒音の «ロ» の一オクターブ上の音です。


ファ (E♭) →  «ツのメリ» (琴古) / «ツの半音» (都山):  «ツ» を一音(半音二つ分)下げた音程(F♭♭=E♭)、つまり «ツ» の一音メリ音です1孔を4分の3閉じてメリます。同じ音程で音を明るく大きく鳴らすために «ロのカリ» で代用することもあリます。


図4:「ロのカリ」。メリとは逆に、下唇からあごにかけてふさがれた歌口の開口部を広げて音程を上げる動作を「カリ」または「カル」とい言います。ロのカリは甲でも大甲でも同じ指使いで鳴らすことができますが「カル」の動作が甘いと音程が上がり切りません。


 (F) → «ツ» :基本五音の二番目「ツ」の甲音です。


 (G) → «レ»:基本五音の三番目「レ」の甲音です。


 (A) → «チ» :基本五音の四番目「チ」の甲音です。



2オクターブ目



図5:変ロ長調 B♭ major 長音階運指表_1オクターブ目


 (B♭) → «ヒの大メリ» (琴古) / «ハの半音» (都山).。«リのメリ» (琴古) / «ハの半音» (都山)の一オクターブ上の音です。4孔を4音分の三閉じメリます。«ヒ/ハ» (C6) を一音(半音二個分)下げた音程(C♭♭=B♭)、つまり «ヒ/ハ» の一音メリ音です


 (C) → «ヒ» (琴古) / «ハ» (都山):«リ/ハ»(C5)の1オクターブ上の音です.。


 (D) → «五のハ» (琴古) / «ピ» (都山). 5孔は少し開けてメリます. 筒音 «ロ» の2オクターブ上の音です。甲の «ロ»  を吹くときよりも更に息の流れを速めます。


ファ (E♭) → «二のハ» (琴古) / «タ» (都山).  少しカリ気味で吹くと正しい音程になります。大きな音を出すために «ロのカリ» (上記図4)で代替する場合もあります。


 (F) →  «大甲のツ»  標準的な尺八ではこの音を出すことができません。 «ツ» の指使いで大甲を鳴らすと1.8管の場合 ではなく半音高い F♯ の音程になります。

ラ (G) → «大甲のレ» 。楽器によってはでにくいものがあるかも知れません。甲の «レ» を吹くときよりも更に息の流れを速めるとこの音が出ます。



3. 変ホ長調 E♭ major


1オクターブ目



図6:変ホ長調 E♭ major 長音階運指表_1オクターブ目


変ロ長調の主音(ド=B♭)から数えて5度下(4度上)のファを主音(ド=E♭)として7つの音を『全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音』の順で音を並べた音階です。具体的には、ド(E♭) レ(F) ミ(G) ファ(A♭) ソ(B♭) ラ(C) シ(D) ド(E♭) という並びになります。ドとファとソに調号の♭がつきます (E♭とA♭とB♭)。


 (E♭) → «ツのメリ» (琴古) «ツの半音» (都山)。1孔を四分の三閉じて、しっかりメリます。あまり大きく明るい音にはなりませんが尺八らしい大切な音です。«ツ» (F) を一音(半音二個分)下げた音程(F♭♭=E♭)です


 (F) → «ツ»: 基本5音の二番目の音です。


 (G) → «レ»: 基本5音の三番目の音です。


ファ (A♭) → «チのメリ» (琴古) / «チの半音» (都山). 3孔を半分閉じ少しメリます。 «チ» (A) を半音下げた音程 (A♭) 、つまり «チ» の半音メリ音です


 (B♭) → «リのメリ» (琴古) / «ハの半音» (都山)。«リ/ハ» 一音(全音)下げた音程 (C♭♭=B♭)、つまり «リ/ハ» の一音メリ音です4孔を4分の3閉じてメリます。


 (C) → «リ» (琴古) / «ハ» (都山): 基本5音の五番目の音です。


 (D) → «ロ»: 筒音の «ロ» の一オクターブ上の音です。




2番目のオクターブ



図7:変ホ長調 E♭ major 長音階運指表_2オクターブ目


 (E♭) → «ツのメリ» (琴古) / «ツの半音» (都山). 乙と同じ指使いで息の流れを速めると1オクターブ上の音が出ます。同じ音程で明るく大きな音を出すために「ロのカリ」で代替する場合もあります。図4参照。


 (F): «ツ» から  (C): «ヒハ» まで → 最初のオクターブと同じ指使いで息の流れを速めると1オクターブ上の音が出ます。 琴古流では «リ» の1オクターブ上の音は «ヒ» と呼びます。


 (D) → «五のハ» (琴古) / «ピ» (都山). 5孔に少し隙間を空けてメリます。筒音の «ロ»の2オクターブ上の音です。



3オクターブ目



図8:変ホ長調 E♭ major 長音階運指表_3オクターブ目



 (E♭) → «二のハ» (琴古) / «タ» (都山).  少しカリます。「ロのカリ」でも代替できます。図4参照。


 (F) → «大甲のツ»  標準的な尺八ではこの音を出すことができません «ツ» の指使いで大甲を鳴らすと1.8管の場合 ではなく半音高い F♯ の音程になります。


 (G) → «大甲のレ» 。楽器によってはでにくいものがあるかも知れません。甲の «レ» を吹くときよりも更に息の流れを速めるとこの音が出ます。


次のステップ

ブログ記事「♯系のダイアトニックスケールを吹いてみましょう! ト長調、ニ長調」につづく

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